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官が軍人を統制するというアメリカの伝統を危険に陥し入れるほど強力なものになったか」という疑問を鮮明
してもらいたいということだったのだ。
 すでに大方の読者は気付かれたことと思うが、この記事は軍事予算そのものを取り上げて、米国は国家の安
全について金を使い過ぎているとか、使い方が足りないとかを論じょうというのではない。軍事予算の大きさ
と文官にょる統制とは常に関係があるとは限らないからである。この記事が論じょうとしているのは「統制」
そのものの問題なのだ。
 この問題は今日極めて緊急な問題でありながらあまり注目されていない。アメリカ建国の父達の誰よりも、
巨大な常備軍が持つ危険性に気付いていたアレキサンダー・ハミルトンも、米国憲法がこれに対する自動安全
装置を備えていることに満足していたょうだ。彼はこう記している。


 巨大な常備軍に対する安全装置は、議会に対して国家財政の管理権を与えている憲法の規定の中に発見さ
 れる。この規定にょって、米国議会は少くとも二年毎に軍隊に発言権を与えることの可香について審議しな
 ければならない。議会はたとえ不注意に、軍事費の使用を恒久的に行政部に委せてしまいたいと思っても、
 陣手に、政府に対してそのょうな過度の信穎を置くことはできないょうになっている。


 ところが今日、以下のクック氏の記事から十分お分りになるように、この憲法にょる安全装置は当てになら
ないものになってしまった。軍部おょび産業界合同のロビーの力以上のものがこれにからんでいる。それは軍
需契約や軍事施設の維持に対して当然の権益を持っていると考えるようになった地域団体∃州、市、町、村
など − の政治的圧力の問題である。軍需生産はいまやアメリカの主要産業以上のもの − アメリカの生活様
式の一部 − となってしまったのである。
 従って、問題は「軍部・産業ブロック」 の勢力に反撃を加えることだけでなく、アメリカ国民に対して、彼
   ウォーフェア・ステート                               だ し
らが「戦争国家」というジャガノートヘインド神話のクリシユナ神の巨像を乗せた山車のこと。この山率
にひき殺されると極楽往生できるという迷信から、みずからその車輪の下にとびこんで死ぬものが多かった、
という − 訳者注)を作り出してしまったこと、そしてこのジャガノートは世界の悲劇的終末を避けるつもり
で作り出されたにも拘らず、いまやその悲劇的終末そのものに向って幕進しているという事実を、知らせるこ
とである。



一九六一年一月十七日の夜、アイゼンハウアー米大統領は、彼の敬愛するジョージ・ワシントンの伝統に従.
って、全国向けテレビ放送を通じて告別演説を行なった。演説はいつものようにアイぜンハウアー独特の、善
意にあふれる言葉で始まった。ところが、彼の演説は半ばになって、突然、アイゼンハウアーらしくない調子
に変ってきた。彼は全米の関心を集めている、この最後の機会を利用して、重大な警告を発したのである。そ
の要旨は「アメリカの民主主義は新しい、巨大な、陰険な勢力によって脅威を受けている。それは『軍部・産
業ブロック』とも称すぺき脅威であって、何百万という人間と、何十億ドルという莫大な金を駆使しており、
その影響力は全米の都市、州議会、連邦政府の各機関にまで浸透している」というものであった。
 アイゼンハウアー前米大統領がその不安をこのょうな口調で表明して全米の聴視者を驚かせてから、その後
の事態の発展は、彼の予言的な告別の言葉がうそではなかったことを示している。というのは、ケネディ新政
権は成立するや香や、ラオス、キューバ、ベルリンなどのトップ・ニュース的国際危機にまき込まれた反面、
目立たないが、悪くするとアメリカ民主主義の将来にそれらの事件よりももっと重大な影響を与えるかもしれ
ない闘いに巻き込まれたからである。この後者の闘いは国内で関われており、一種の後衛戦ともいうべきもの
であるが、それは軍部と大企業との好戦的な同盟という現代の巨大な勢力に対して文官にょる!従って民主
的な−統制を確保するために過去においても闘われ、現在も問われているのである0「文官による統制」対
「軍人による全体主義的統制」という問題は、ケネディ政権成重刑からすでに始まっていた○ケネディ大統領
は最も強靭な精神力と行動力を持った実業家の一人であるフォード自動車株式会社の重役、ロバート・S●マ
タナマラ氏を国防長官に任命、同長官をして国防総省を掌握するため精力的な活動を開始させた0これは一見
マクナマラ氏個人に限られた行動であるかのように見えたが、これには極めて重要な国家的問題!文官に去
る軍部の統制というアメリカの伝統的原則の問題!がからんでいたのである0

 ■右翼からの波
 マタナマラ氏の態攫に対して高根将校速から直ちに反撃が起った。それは執ようで、激しく、微妙な反撃で、
頑強な官僚組織に特有の体当り戦法を縦横に活用したものであった。この唇惨な肉弾戦は大部分一般大衆には
知られなかったが、六月頃までには、軍備拡充論の急先鋒であるサイミントン上院議員さえ、これを「非愛国
的行動」と呼んだほど極端なものとなっていた。
 国防総省内に燃え上ったこの権力闘争に、もう一つの要因が加わって、火に油を注ぐ結果となった0それは一
ケネディ政権が対内的には穏健な社会主義的改革を唱え、対外的には軍事援助から経済援助へ重点を移行させ
ょぅとしたことである。この政策は全米にわたる極右の宣伝にょって反撃されることになった。この種の宣係
活動は、ジョン・バーチ協会によって象徴されているが、「自由主義は社会主義に通じ、社会主義は共産主義」
に通じる」という民主主義を甚しく無視し、正気を過した三段論法を用いる強力な軍部・産業ブロックの支持
を受けたのである。政府はこのような過激な動きを抑え、軍部は政治活動に介入すぺきでないとするアメリカ
の伝統を回復するため慎重な努力を払ったが、結果はマッカーシズム時代の再現を思わせるような反撃の波が
上院にまで波及することになった。
 これら二重の発展T文官の国防長官対職業高級将校という省内の権力闘争と軍部を党沢的な政治活動から
退けょうとする努力が引き起した興奮!が、この複雑で重大な問題の全貌を描き出している。この秘かな闘
争には民主主義の基本的要素王文官による統制が軍人に優先すべきであること、戦争か平和かという重大問
題に対しては文官が最終的な発言を持たねばならないこと、従ってこれらの問題は軍部・産業ブロックの独裁
的指令や宣伝にょって決定されてはならないこと、などの要件呈に係わる問題が含まれているのである。問
題を本質的に見れば、アメリカの伝統的な民主主義の原則と、ヒトラーを生み出したプロシア的な軍人、実業
家独特の物の考え方との悶争なのである。
 このように考えて来ると、このあまり知られていない国内の対立問題の方が国家の将来に係わる大問題であ
るだけに、ベルリン問題を含めた目前の諸問題よりも重大であるといえるのである。ここで問題とされるのは、.
米国の軍事力、陸海空軍の軍事的能率でもなければ、宇宙管理の問題でもなく、軍需品の契約や調達上のムダ
や重複といった問題でもない。もちろん、これらは重要な問題には違いない。しか、し、これらもそれ以上の大
問題!すなわち、軍部・産業ブロックが国政のあらゆる部門にクモの巣の如く魔手を伸ばしているという問
題!に較ぺれば副次的な問題に過ぎないのだ。このブロックの影響力はわれわれが必要とあれば戦争を冒し
てでも守ろうとしている、民主主義そのものを破壊してしまうほど悪性のものなのか? それは、国家の重要
問題を事前に処理してしまうほど強力なものなのか?一体、われわれは国防、すなわち何百億ドルという武
器調達の必要を民主主義の最大の財産である「自由な討議」、「自由な決定」 の原則と調和させることができる、
止筆′エご・・1・ご
第一部 宿命的な問題
のか?あるいは、国民の声が、ほとんどあらゆる問題に関して、軍部・産業ブロックの声と姦しなければ
ならないのか?これらが緊急の解決を要する重要問題の議なのだ0まず、アイゼンハウア晶大統領が任
期の終りに、この問題をどのように提示したかを見てみよう○

 アイクの警告
ァィゼンハウアーはその演説の本論に入る前に米国民は長期の闘争を覚悟しなければならないと警告を行な
い、次いで複雑で困難な問題と取り組むに当りて冷静な態度を失ってはならないと述べた○さらに国内におい
ても、国外においても、問題の困響から挫折が生じ、挫折の結果過激な措置による韓決を求める声が起って
来るかもしれない、と次のょうに述べた0
 今後是概は相次、いで誉だろう0これらの危機が宙内で生じたものであっても、国外で生じたものであ
っても、またその規模の大小に拘わらず、なにか思い切った、強硬な措置によって問題を哀に解決できる
のでないかという誘惑が絶えず雪て来るものである0わが国の民主主義に対する新しい脅威が起って来る
であろう。私竺こで、私の在任中に起って来た現象で、祖国がいまだかつて直面したこと豊い重大な脅
威について妄Pしたい0
 第丁衷大戦まで米国には軍需産業というものはなかった○鋤を作っていたアメリカ人は時間的な余裕があ
ったために必要に応じて剣を作ることさきたからである0しかし、いまや、われわれは国防を壷的な緊
急措置だけで間に合わせるというわけには行かなくなった0われわれは巨大な規模の恒久的な軍需産業を持
たざるを得なくなったのである。この外に、三百五十万人の男女が直接国防に関係した職業についている。
 ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ  ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ
われわれは年々、米国のあらゆる企業の純益額以上の金を軍事費に投じている。(傍点は原著者)
 巨大な軍事組織と大軍需産業の結合体という現象はいままでわが国にはなかった新しい現象である。連邦
政府のあらゆる部門、あらゆる州議会、米国のあらゆる都市で、この結合体は、経済的に、政治的に、いな
精神的にも、強力な影響力を発揮している。われわれはこのょうな事態が必要であることは認める。しかし、
その重大な意義!われわれの勤労、資源、生活、さらに米国社会の構造そのものまでがこの間題と関係を
持っているということTを看過してはならない。
 われわれは、政府部内で行なわれる会議で、軍部・産業ブロックが意識的にまたは、無意識的に不当な勢
力を捜得しょうとすることに対して警戒しなければならない。不当な勢力が克烈に撞頭して来る可能性は現
実に存在しており、今後も変らないだろう。
 われわれはこの結合体の勢力が米国の自由や、民主主義的な政治過程を破綻させるような事態をもたらし
てはならない。われわれは何事も止むを得ないこととして放置してはならない。敏感で、分別のある市民の
みが巨大な軍部・産業ブロックと平和的な手段、目標を適切に調和させ、安全と自由を守ることができるの
である。


アイゼンハゥアエ糾大統領は右のょうな言葉で問題を具体的に提示し、さらに、もう一つの警告を行なった。


 技術革命の結果、国家の生存のために複雑で高価な研究が不可欠のものとなり、そのため、自由な思想と
工0
第一部 宿命的な問題
 科学的発見の源泉として歴史的な役割を果して来た大学にも研究の進め方に三の革命がもたらされた0そ
 れは研究に莫大な金が必要となったという理由もあって、連邦政府との契約によって知的探究心を満たすと
 いう事態が生じて来たということである○私は学者が政府に雇用され、その結果、政府に統制されるという
 事態を危惧すると共に、科学に依存することから公共のための政策が特権的な表の科学者、技術者によっ
 て支配されるという事態をも恐れるものである○

 過去の実例
 ァィゼンハゥアー氏はこの発言の中で特定の科学者のことを示唆していたが、それは〃水爆の父″と呼ばれ、
軍縮、核実験問題について強力な発言力を持っているエドワード・テラー・博士の名を思い起させるに十分であ
った。また、たとえテラー博士を連想しなくとも、アイゼンハウアー氏の描説の内容は驚くに価するものであ
った。国家が或部・産業ブロック〃というしっぼで振り回されるかもしれないというアイゼンハウアーの警
告は、それが告別演説の中で行なわれたということによって、扁強い印象を与えたのであった0それは米国
民から最も尊敬されている軍人大統領のロから語られょうとは恐らく誰も予期していなかった言葉であった0
しかし、アイゼンハウアは大分前からこのような圧力を受けていた○入年間の任期中、アイゼンハウアーは
巨大な軍需産業が必然的に作り出す特殊の利権と、しばしば衝突して来たのであった0最初の衝突は完五三
年に、彼が空軍の予算から五十億ドルを削減した時に起りた○蓋丁は国民的英雄であり、元帥で怠る大統領
の判断に服することを拒香して、反対の声を議会とマスコミに持ち込んだ0ある議員は直接アイゼンハウア
に電話して、国防総省内の反対運動が巻き起した選挙区の圧力によって議員達の表決の態度が変って来たと伝
えた、とはホワイトハウスの当局者の講である。そして、これがその後の常例となった。
 その後も、空軍は、純粋の軍事的判断にょって国防のために必要と認められる以上の金を政府が重爆撃機の
ために授ぜざるを得ないょうな圧力を作り出し、議会をして政府(共和党政府たると民主党政府たるとを問わ
ず)にこれを押し付けさせることに成功している0アイクはその全任期を通じて、軍事支出を削減しょうとし
た時には必ず三軍の高級将校達と衝突した○軍部・産業ブロックが作り出す圧力とその手口という点で興味が
あるのは一九五九年に起ったミサイル論争である○この紛争では、空軍と陸軍がそれぞれのお気に入りの、、、サ
イルの長所を主張して譲らず、それぞれのお抱え業者と共同戦線を張って、何十億ドルにも上る軍需割当をめ
ぐって真向から対立した○空軍はお抱え業者であるボーイングが製作したボマーク対空ミサイルこそ最高の防
空丘ハ器であると主張し、陸軍はウェスタン・エレクトリック社のナイキ・ハーキュリーズを推した。これら二
つのミサイルにはいずれも、ソ連が開発している高速ロケットの対抗兵器としては不適当であるという科学者
の意見がかなり強力であった(その後の情勢はこの意見が正しかったことを示しているようだ)。しかし、空
軍と陸軍はその威信にかけて、また数十億ドルという契約を確保するために、強力な宣伝活動を開始した。そ
の目標は、最終的テストや資料の分析の完了も待たずに生産を閑姶したい、ということだけであった。
 その後下院の小委員会で、陸軍のスポークスマンは、陸軍がウェスタン・エレクトリック社に対し、ナイキ・
ハーキュリーズ確保のために全国的な宣伝活動を展開するように勧告した事実を認める証言を行なった。これ
に対し、ボーイング社は、少くとも空軍の黙認の形で、ボマークを大々的に広告、宣伝した。広告・宣伝を受
持ったマスコミ業者達の戦争体制強化への努力はちょうど、議会がナイキ∴−キュリーズやボマークヘの割
当額を審議している最中に行なわれた0これら一連の動きが作り出した情勢はもはや説明する必要もない。大
工之
第一部 宿命的な問題
統領も議会も、大部分軍需契約から得られた資金によってまかなわれた広告、宣伝攻勢によって、性能もよく
分らない、、、サイルのために何十億ドルという金を投入するように圧力を受けたのである。軍事的効果とか国家
的要請などは無視され、軍の威信と莫大な軍需契約だけが関心の対象とされたのである。


 ミサイル・ギャップ
 このょうな情勢に鑑みて、アイゼンハウアー大統領は一九五九年に、二回にわたり米国の軍国主義者達が利
己的な目的から圧力を強化して来たことを非難した。その年の三月の記者会見で「国力が許せば国防費を今後
も増加するつもりか」という質問に対して、アイゼンハウアーは「ノー」と答えて次のょうに説明した。


 良識のある人間なら誰でも、もし国防消費を制限しなければ米国のあらゆる資源は軍事生産に集中される
            ガTヤリソソ・ステート
 ことになり、米国は″要塞国家″になってしまうことを了鰐できるだろう。


                          ミユニショソズ
 同年六月の記者会見で、アイゼンハウアーは、〃軍需品ロビー″(一記者が使用した言葉)によってひそかに
国防計画に加えられている影響力の問題について上院議員と話し合った、と述べた。大統領は″軍需品ロビー″
という言葉を使用することは避けたが、ナイキ、ボマーク両派にょる宣伝合戦に対しては強硬な態度を示し、
「純粋に軍事的な決定であるべき事柄について、しばしば不当な政治的、経済的考慮が働いていることがある」
と断言した。
 アイゼンハウアーほどの人がこのょうに明確な発言を行なったにも拘らず、軍部の考え方は一向に改まらな
かった。一九六〇年一月に、全米の注目を集め、広範な影響力を及ぼした紛議が持ち上った。それはいわゆる
″ミサイル・ギャップ″論争である。
 その後の分析にょって、この論争を起したのは空軍であったことが分っている。米戦略空軍司令官トーマ
ス・パウアー大将がニューヨークのエコノミッ久・クラブで行なった演説がそもそも″ミサイル・ギャップ″
論争の始まりであった。その要旨は「ソ連のミサイル戦力は逢かに米国を凌駕しており、やがて米国のあらゆ
る戦力を三十分問の核攻撃で破壊し、米国を崩壊させてしまう能力を持つだろう」というものであった。パウ
アー大将が口火を切るや香や、ジョーゼフ・オルソップがニューヨーク・ヘラルド・トリビユーン紙に五何に
わたって〃われわれは絶壁にぶらさがっている〃式の記事を連載して、問題を敷術した。全米はたちまち″、、、
サイル・ギャップ″という恐ろしい予測で騒然となった。最初のうちはこの騒動が奇妙なほどタイミングを得
ていたことに気付いたものはほとんどいなかった。しかし、この騒動は、戦略空軍が、即刻反撃のために水爆
を搭載した爆撃櫻の三分の一を常時空中パトロール体制に置くための追加予算を獲得しょうと議会工作を行な
っていた時と偶然一致していたのである。
 アイゼンハウアーはこの紛争によって軍事的洞察力と指導力を試されることになったが、彼は直ちにこの▲問
題は「全くの作り事だ」と非難し、「ソ連との問にそのような開きはない」と再三言明した。「アイゼンハウア
ー政府は予算の均衝を維持したいあまり、米闇を事実上無防備状態におとし入れた」といういいがかりに対し
ても憤然として反駁を加えた。六〇年三月三日、彼は「とやかくケチをつけたがる軍人が多過ぎる」ときびし
い口調で論評を行なったが、それはパウアー大将に対する激しい非難であったことは明らかである。そして、
二月十一日には「圧力同体の働き掛け、偏狭な議論、その他あらゆる圧力を排除して米国が真に必要とするも
第−・部 宿命的な問題
のを尊重して行ける自信がある」と言明した○当時軍事専門家の問ではアイぜンハウアIの立場はかなり強力
に毒されていたが、そのような是はヒステリックな当時の情勢↑ではほとんど注目されなかった0国防総
省の高級将校に関する当時の調査によれば、これら将校のうち多数が〃、、、サイル・ギャップ″などが起るはず
がない、と考えていたことが明らかである○また、当時海軍作戦部長で、好戦的な態度で知られていたアーリ
ー・パーク海軍大将さえ雲の公聴会で、〃、、、サイル・ギャップ〃を認めない、と次のように誓している○
 ゎれわれは、敵がいつ、いかなる手段でわれわれを攻撃しょうとも、これを破砕できる〇一方、ソ連が米
国を破壊する能力を開発しつつあることは事実であるが、これに対してはわれわれはいかんと左様がな

 アイクの意図
以上は、いわゆる″核手詰り”という見方と空軍流の核戦力についての発意識との鋭い対照を示している
が、その後も″、、\サイル・ギャップ”論争は続いた○戦略蛋がその筆機の表を常時滞誉せるための資
金獲得をねらって引き起したとしか思えないこの論争は、全米に測り知れないほどの影響をもたらしたのであ
る。アイゼンハウアー政府は予算を均衡させたい余りに民力を低↑させた、という非難は六〇年の大統領速
拳の重要争点の;となった0ケネディは筆戦で、、、サイル論争を最大限に利用したため、就任した時には
軍事費の増額を行なわざるを得ない立場に追い込まれていた○
望のょうな情勢がアイゼンハウアーをして、その告別演説の中で、或部・産業ブロック〃の撞頭は民主
主義に対する脅威となる恐れがあり、国民はこれを警戒せねばならぬ、といわしめたのである。その後、ホワ
イトハウス当局はアイゼンハウアIの考え方と演説の動機について次のように説明した。


 大統領は国民的英雄としての威信をもってしても、軍部・産業ブロックによる政治的圧力、宣伝、さらに
 官僚を通じての圧力を抑えることは到底不可能だとしばしば感じていた。アイゼンハゥアーはニクソン、ケ
 ネディのいずれが彼の後継者となるにしても、軍人でないことに変りはなく、将来軍部・産業界の指導者と
 見鮮を異にした場合、軍が彼らの見好を支持してくれるだけの信望はもっていないと大統領は信じていた。
 そして、軍部・産業ブロックを部分的に統制することさえ困難であることをみずから体験した大統領は、自
 分よりも若くて、信望も低い後継者がいかに陶難な仕事に直面するかを十分予想できたのである。彼は寧の
 影響力が彼の退任後も増大して来る危険を明瞭に見通していた。このょうな判断が彼をしてあのょうな演説
 をなさしめたのである、と。


 ケネディ政権の最初の六カ月間の動きが、アイゼンハウアーの判断の正しさを十分に証明した。新大統領は
アイゼンハウアーのいった「新しい軍国主義がわれわれの精神を知らぬ問に侵して行く」事実を明瞭に認め、
文官にょる統制という原則の確立を新政権が最初に手がける仕事の一つとした。大統領もマクナマラ国防長官
もこの方針を明らかにしたが、軍部と、軍部に同情的な大産業や議会の指導者達という巨大な反対派を敵に回
さねばならなかった。しかも、前政権時代を上河る軍拡計画は必然的に、すでに頭でっかちとなっている軍国
主義ブロックの手中にさらに何十億ドルという金が転がり込むことを意味していた。
第一部 宿命的な問題
 ァィゼンハウアーの告別演説から二カ月以内に軍国主義的な動きが明らさまに現われて来た○陸軍は、軍需〉
により雇用問題が影響される地域出身の議員速からけしかけられて、、、、サイル対抗、、、サイル、ナイキ・ジュー
スの全面生産を行なえ、と運動を開始した0ナイキ・ジュースは六二年に最終テストが行なわれることになっ
ているが、これを待たずに全面生産体制にはいれというのが、陸軍の主張であった〇一方、ロッキード航空会
社はさきに、貨物運搬用おょ慧ハ貞輸送用のジェット機百概の設計および製造のため十億ドルの契約を獲得し
ていた(これによってジョージア州マリエツタの同社工場は二千人を増員できることになった)0また、下院】
軍事委員会は全米五十州の七百九十の軍事施設で建設を行なうための資金八億八百万ドルの割当法案を可決しけ
ていた。これらの動きは、軍事発注によって景気後退に適え水を送る〃という新政権の施策の一環であった一
し、ビンソン同委員長が下院で言明したように「この割当法案は国民全体の利益に沿うもの」であったのであ
る。この後に来たのがベルリン危撥であった。
 ミーヨーク・ポスト紙のパリ特派員ジョーゼフ・バリーは次のように書いていた0

 政府は米南が最も必要としているのは軍備の強化であるという立場を取っていたから、もしベルリン危機・
 が起らなかったら、これを作り出す必要があっただろう○

軍備強化は危機的情勢の下においてのみ正当と認められるものだ0アイゼンハウアー政権の時代にもしばし
ばベルリン危概が起った。しかし、それらの危機はすでに過ぎ去っていた○米函はカナダ、英国などの同盟国
と僧兵なり、徴兵制を保持していたが、ベルリン危概までは急激な徴集を行ない、陸軍を事実上戦時態勢に置
くことを必要とは認めていなかった。これらの点から見て、六一年の危機は従来とは異なったものとなるはず
であった。


 軍拡熱
 ケネディ大統領がウィーン会談後、全米に向ってテレビを通じて新たな軍拡の必要を説いた時から軍拡の糸
口が切られ、これに即応して起った反響は新軍国主義の下でどのょうな米国が作り出されて行(かを雄弁に語
っていた。この反響には二つの主要な要素が含まれていた。一つは新軍拡計画への喝宋であり、もう一つは、
ょり重要な愛国心という名目の下に、教育補助金とか老人に対する医療補助といった福祉国家的な″むだ金″
は削減すべきだという主張であった。単純で、乱暴ないい方をすれば、それは「集団殺人兵器のための軍事費.巾
増額万才! 良民はどうでもよい」ということだったのだ。
 ケネディ大統領の全米放送の後で行なわれた各種テレビ対談はその後の議会の動きを示唆していた。″ボー
イングの代弁者″という異名のあるへンリー・ジャクソン上院議員は「米国はいまや新しい、恒常的な、そしし
て多額の軍事支出の時代にはいった」と満足気に揚言したものだ。朝鮮戦争の時、米国の軍事予算が増額され∵
たょうに、ベルリン危機は再びこれを高水準に引き上げ、それきり元へは戻らないょうな勢いであった。キー
ティング上院議員は、議会が大統領、軍部の要請額を全額そのまま承認することに賛意を表し、それまで議会‥
がボーイング爆撃機の増産用として政府に承諾させょうとしていた約五億ドルを承認させる絶好のチャンスだ」
とさえいった(ただし、ここ数年の問、爆撃機よりも、、、サイルの方が優秀だという読が行なわれており、アイ
ゼンハゥアdケネディ両政権の国防長官はいずれも、やがて時代遅れになってしまう爆撃機のために五億ド
蛸い
第一部 宿命的な問題
ルもの金を投入することには反対していた。しかし、ジャクソン議員はキーティング発言を得たりとばかりに
支持し「ベルリンの緊急事態によってケネディ政権はやっと臼が覚めるだろう0われわれはボーイング爆撃轢
の生産を開始することになろう」と発言した)。


 大砲はOE、教育費はW0
 しかし、なんらかをぎせいにしなければならぬという点では異論がなかった。これはむろん、多くの人々の
生活がぎせいになるという意味であった。何十億ドルという軍事費の増額を行なうとすれば、その金をどこか
                                        丸
から探して来なければならないからだ。すでに高額の税金を負担させられていた米国民は、明日からとはいわ
ずとも、やがては負担を加重されるはずであった。たとえそうなっても、何もかも満足させ得るはど資金が得
られるはずはない。そこで、大砲は「イエス」だが、教育費は「ノー」という構想が出て来る○共和党は、テ
キサス出身の新しい保守主義者ジョン・タワー上院議員のいうままに、右の構想を積極的に推進し始めた○政
府はいまや、国民のための支出計画を削減しなければならなかったO「福祉国家的妄想を棄てされ」というわ
けである。その後、議会は全会一致で数十億ドルの新軍拡費を承認、軍事費は推定年額五百億ドルにも達する
記録的数字にはね上った。この新規予算には二億七百万ドルという画期的な放射能退凍壕建設費も含まれてい
たが、その代り、大統領が勧告した教育補助費法案は下院議事運営委員会でタナ上げされたままであった0
軍需業者がわが世の春を謳い始め、証券業者が″ベルリン景気”に浮かれ始めると、アイゼンハウアーの最
後の警告も完全に無視されてしまった。しかし、冷静な常識人はアイゼンハウアーが言及した勢力をじっと見
っめていた。一生を軍人で通したアイゼンハウアーでさえ軍部の勢力に不安を持ち始めたということは、国民
にとっては正に憂慮すぺき事態であった。一つだけ確かにいえることは「アイゼンハウアーが憂慮していた事
態はたしかに望ましいものではなかった。しかし、何十億ドルという軍拡費がつぎ込まれょうとしている今後
の情勢は、それ以上に悪くなることはまず間違いない」ということだった。
 次に挙げるのはアイゼンハウアーのいわゆる軍部・産業ブロックの勢力の一端を表示する数字である(数字
の大部分はすでに古くなっている)。


 数年前に発表されたコーディナー報告によれば、国防総省の資産は千六百億ドルで、いかなる尺度から見て
も世界最大の組織である、とされている。国防総省は米国内に三千二百万エーカー以上、海外に二宵六十万エ
ーカーの土地を所有している。従って所有地の面積はロードアイランド、デラウェア、コネチカット、ニュー
ージャージド、マサチユーセッツ、メリーランド、バーモント、ニューハンプシヤー各州の合計よりも大きい0
 軍部勢力の典型的なシンボルともいうぺき巨大な国防総省ビルは、米国民主政治の殿堂である国会議事堂を
その五角形のこ巽の中にすっぼりと包み込んでしまう豪壮さである。
 アイゼンハウアーの在任中、三千五百億ドル以上の軍事費が消費された。一九六二年度予算案八百九億ドル
のうち、一ドルにつき五十九セントが軍事費に割当てられていた。このドルの洪水によって国防総省の経済的
影響力は全米のすみずみまで浸透している。国防総省の軍事資産はU・S・スチール、米国電信電話会社(A
T・T)、メトロポリタン生命保険会社、ゼネラル・モータース(G・M)、スタンダード・オイル・オブ・ニ
ュージャージーの資産合計の三倍に相当し、その職員数はこれら五社の社員総数の三倍である(これら五社の
国政に対する影響力はしばしば識者を憂慮させている)。
多0
第一部 宿命的な問題
 軍部とビッグ・ビジネスの大結合体は数十億ドルの契約金を通じて一心同体となっており、一九六一年度の
全軍事予算のうち約二百十億ドルが調達費に使われたが、調達費の四分の三は大手百社に渡り、うち巨大十社
が七十六億ドルを獲得した。しかも、巨大三社、つまりゼ、そフル・ダイナ、、、ックスが十二億六千万ドル、ロッ
キード、ボーイングがそれぞれ十億ドル以上と、三社で三十億ドル以上を占めていた0ゼネラル・エレクトリ
ックとノース・アメリカ航空の二社はおのおの九億ドル以上を獲得した。

 このょうな巨額の契約は調達担当役人の思い付きで、一握りの巨大会社に割当てられるのだ○現に二百十億
ドルの契約のうち入十六・四パーセントは至別に入札を行なわずに割当てられた0これだけでなんらかの裏
面工作が行なわれたのではないかという疑惑が当然起って来るが、いままでのところ、確実な証拠はないょう
だ。ある特定の兵器または装置の支持者だった軍人が引退するや否や、現役中にひいきにしていた会社の重役
に高い報酬で迎えられるということがょくある〇一九五九盲六〇年に活動したエーバー調査委員会は、少佐
以上の退役将校のうち千四百名以上が、二百十億ドルの軍需契約の四分の三を山分けした大手百社で働いてい
ることを明らかにしたが、この中には二百六十一名の元将官ないし元帥が含まれていた○最も多くの元将校
を抱えている会社は最大の軍需築約を取った会社、すなわち、ゼネラル・ダイナ、、、ツタスであった0同社は二
十七名の元陸海軍将官を含む百八十七名の退役将校を抱え、その社長は元陸軍長官フランク・ペイスであっ
た。
 このような力の集中は米国経済全体を金しばりにすることによって、一層強固なものとなっている0巨大軍
需会社が出す下請契約は、全米のほとんどすべての市町村に影響を及ぼしている○下請けにょって何百万ドル
にも上る仕事が生み出される。国防総省に所属している人員は三百五十万人、そのうち九十四万七千人は民間
人である。これらの人員に支払われる給料は百十億ドルで、これは米国内経済の指標といわれる自動車産業が
支払う給料の二倍以上である。さらに、軍需産業に直接雇用されている人員は約四百万人と見られている。と
すれば、米国の全労働人口の約十分の一に当る七百五十万人が軍部に頼って生活しているということになる。
軍需工場に依存する雇用度が特に高い地域では、軍事消費に対する依存度がほとんど百パーセントになってい
る。例えば、カリフォルニア州は年々約五十億ドルの軍需契約を獲得している。ロサンゼルスでは、全雇用の
半分は直接または間接に、軍備競争継続、すなわち軍事消費に依存していると見られている。このょうな状況
の下では、食糧品店、ガソリン配給スタンドに至るまで軍需工場の盛衰にょって営業成績が決定されると考え
るようになるだろう。同様の理由で、軍事費の削減、いなその気配が見えただけでも、軍需関係の労資双方か
ら、また選挙への影響を気にする政治家達から、たちまち反対の声が挙がるのである。
 米国の新しい − そして恒久的な − 軍国主義を基盤にして築かれた巨大な、圧倒的な棒力の構造の実体は
大体このようなものである。それはアイゼンハウアーのいう″全米の都市、州議会、連邦政府の各機関にまで
浸透している〃カなのである。
 これは米国にとっていかなる意味をもつものであるか、その回答はあまり芳ばしいものではなく、またこの
回答を無関心に受取っている現状は決して歓迎さるべきことではない。高齢ながら毒舌豪のフランダース上院
議員はこういったものだ。


 われわれは軍備のために、われわれの生活水準や凝済生活の自由をぎせいにしている。しかも、そればか
第一部 宿命的な問題
 りでなく自由そのものを串ぎせいにしているのだ○われわれはアメリカ的生活様式を表塞国家〃のそれに
 転換することを強制されているのである0′

 貴任あるベテランの上院拳貝がそのような発言をすることは享年前には考え是ばなかったことだ0当時
かりに上院議員がこの様なことをいったとしたら、それこそ全米に大騒動を巻き起したに違いない○だが、今
日米国がすでに戎争国家〃となってしまった証拠に、この言明に対してなんらの反響多起らなかった0
 軍備にかけたもの
                                      ヽ ヽ
 いまや、米留民のみならず世界の前には莫大なかけがなされている○米国の民主主義が存続するか杏かとい
旦問題だけではなく、平和か戦争かという大間鴇、ひいては人類の生存の可能性そのものが、われわれの態度
にかけられている。米国は、巨大な軍部・産業ブロックを抱えながら世界の平和に貢献することができるので
ぁろうか、またそんな状態のままで緊張緩和の唯右手段である軍縮を真剣に追及して行くことができるであ
ろうか、米国が軍事体制のために年間五百億ドルもの金を投じながら、しかも同時にこの体制の撤廃のために
真剣に努力できるであろうか−という疑問を持つ者が多い〇一室ハ妄三月の「議会季報」は下院軍事
                                 コソグレショナル・クウォータヮー
支出小委員会の議員の「寧普びその慧而契約者が米国内に高度の緊張感を維持したがっていることは疑い
ない」との発言を引用しており、さらに下院軍事委員会での議員の「われわれが戦前の日本やドイツと同じ
道を歩もうとしている危険がある」−つまり、戦争国家は必ず戦争に突入するという歴史の常道1との発
言をも引用している。消息通の人々の口からもれるこのような発言は、政治的に無関心で自己満足にひたって
いる大衆の問にはなんらの動揺も起さない。現代アメリカの腐敗した民主主義のシンボルは歴史上人顆が直面
している最大の問題についてさえ、事実上なんの討議も行なわれていないという一事に求めることができよう。
われわれは次第に軍国的になりつつある社会を、思考力を欠除した感情的な愛国的言辞と軍旗の中にくるんで
いるのだ。緊張が故意に作り出されたものではないか、厄介な内政問超を要領よく国外の軍事危概とすり変え
ているのではないか−これらは米国民がほとんど思い付きもしない問塩で、まして検討するなどとは思いも
寄らないことがらなのである。とはいっても、もし米国が戦前の日本やドイツと同じ道を歩もうとしているの
なら、われわれは最後の破滅はほとんど不可避であるという事実を認識しなければならない。というのは、現
代の、厳粛にして、驚くぺき、しかもほとんど認識されていない黄理は、今日ほど軍部の横暴を効果的に押え
得る可能性が弱い時代はないからである。平和を戦争に転換する最後の、劇的な決定でさえも、いまや、国民
やその代表者達の手中にはない。それは、現代の戦争技術の本質的要求にょって、結局は軍人に委されねばな1
らない決定事項となり果てたのである。


 兵器が支配する
 これは正に近代兵器の恐るぺき飛行距離と速度と物凄い破壊力が生み出した結果である。軍人が国家を支配
し始めたょうに、兵器が軍人を支配し始めたのだ。速度、おょぴ反応と報復の迅速さが奇襲から生残るための
要件となった。その結果、全面的な破壊の火蓋を切る貴任が政治指導者の手から下級の軍人へと移って行くと
                        ヽ
いう矛盾が不可避的に生じて来る。
 このょうな事態がどうして突然起って来たかをしばらく考えて見よう。今日誰もが認めるょうに、議会は平
声4
第一部 宿命的な問題
和か戦争かという重大問題を決定する機関という建前になっている。憲法は、議会のみが戦争を宣言できると
規定している。しかし、敵の、、、サイルがわずかに三十分で米本土に到着する現代では、議員が集って審議し、
戦争を宣言する時間がないことを知らなければならない。あるのは反応する時間だけである。そこで、大統領
が決定を下すということにしよう。大統領が、、、サイル発射のボタンを押す命令を下すというわけだ。理論の上
ではそういうことがいえよう。しかし、この理論はごまかしである。というのは、実際問題としては、大統領
も議会と同様、決定を下せない − つまり、時間がないのだ。
一九五入年五月、米国の極めて保守的な機関である全米企画協会へナショナル・プラニング・アソシエーシ
ョン)が、ほとんど気付かれていないが、必然的に起って来る右のょうな事態を分析して、特別報告を行なっ
た。この中で「核兵器運澱体系の反応時間は短くなる」と次のょうに述べている。


  反応時間が急速に締まりつつあるという事実は不気味な意味を持っている。検討し、決定を行なう時間は
 今後次第に少なくなって行くだろう。武器の管理樺は一層集中されて下部校構へ移って行くだろう。通信技
 術の発達の結果、即時発射可能のロケットの管理権は一つまたは二、三の司令部に集中されるだろう。もし
 反応時間を即時にする必要があるなら、指揮権を一層下部の櫻構へ引下げねばならぬだろう。議員、大統領、
 いな高級官僚も、これらの司令部に常駐するわけには行かない。即時発射の強力兵器を集中的に、下部の人
 間が管理することは無分別で、無責任な、時には気違いじみた行為を引起す危険をもたらす。このょうな行
 為が起る可能性は一時点だけに限って見ると少ないかもしれないが、何年も経つうちにはその危険が積み重
 なって莫大なものになるであろう。
この見解を裏付けるものは、ニューヨーク・タイムスのジャック・レイモンド記者の記事である。同記者は、
米加合同北米防空司令部が一九五七年九月コロラド・スプリングスに作られた後同司令部を訪問、その機構を
調査して、次のょうな深刻な現実を報道している。

 万一敵の攻撃が行なわれたら、第三次大戦の最初の原子兵器を発射する決定を行なうのは師団長であるか
 もしれない○この師団長は少将または准将級の将校で、必ずしもアメリカ人とは限らない。
当時、大統領の特定の許可なしに戦術核兵器を発射できる権限を与えられていた唯忘機構(脂の謂令)の長
を勤めていたアール・E・パートリッジ大将は同記者に対し「私でさえ発射命令を出す時間がないかも知れな
い」と次のょうに告白したO「もし敵の攻撃があまりに急速に行なわれたら、防衛の前線のどこかで下級将校
が行なった決定を予め知ることはできないだろう○もちろん、これは、敵の企図が誤辞される余地がないと仮
定した上の講だ」と。
 このょうな仮定は常識、現実を完全に無視したものだ0反応時間がゼロに近付くにつれ、必然的に緊張感が
増大し、反省力が衰え、衝動的な行動だけが残ることになる○これが、現在の気違いじみた科学、技術、軍事
の歩みが必然的に行きつく姿である。重大な管理樺が次第次第に軍の下部櫻構へと引き下げられて行くという
事突−それだけでも最後の大惨事が保証されているようなものだ。間違った情報、判断の誤り、早まった行
動が時と場所にょって、致命的な結果を招くことになるかも知れず「いいからやっつけてしまえ」という式の
病的または狂信的な人物がいつ何時、世界と人類の運命を決定してしまうかもしれない。ジョン・ホプキンス
大学のある心理学者は「世の中には本質的に悪性の人間がかなりあり、彼らは個人的な怨恨から世界の破壊を
引起すかもしれない。心理学者はこのょうな人間が世界の各国で次第に指揮系統の中で重要な地位を占めて来
はしないかという恐怖に襲われている。」といっている。またニューヨーク・ポストは「世界を破滅させるに
は″気違い″が一人あれば十分だ」という気味の悪い論説を書いたことがある0
将来の見通しはこのように暗澹としており、しかもそれは確実性を帯びたものであるが、米国人はまだ貴重
な、そして恐らくは最後の反省の機会を持っている。そのような反省を行なう必要はないといい切れる人があ
るだろうか。つまり、軍部・産業ブロックの問題をとことんまで考えてみる必要、さらにいい換えれば、米国
の軍部のものの考え方、この考え方と結び付いている勢力について分析、研究してみる必要である0